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やすみりえの「ことのは5・7・5」Vol.1
2016.06.02
みなさん、川柳にはいろいろなカテゴリーがあるのをご存知ですか?ひとつは「時事川柳」と呼ばれる、社会のニュースや世間の話題を取り入れたもの。そして、思わず笑いを誘う「ユーモア川柳」。さらには作者の心情が響いてくるような「抒情的川柳」と呼ばれるものなどです。そのいずれも、皮肉や諧謔精神ばかりが題材ではありません。今回からスタートしたこのコラムでは、さまざまな川柳をご紹介していきたいと思っています。ぜひ、十七音の魅力に触れていただけたら嬉しいです。
まずはこの文芸の始まった江戸時代の句を味わってみましょう。「盗人を捕らえてみれば我が子なり」
こちらの一句、親の立場を詠んだ作品ですね。“まさか、うちの子がこんな悪いことをするなんて・・・”というような言葉に置き換えると、この句の内容は現代の私達にもじゅうぶんイメージできます。
ちなみに、この句の詠まれた当時は「川柳」ではなく「前句付け」と称されていました。それは“七・七”の言葉で出されたお題に対して“五・七・五”の句を付けるという形式だったからです。この場合ですと“切りたくもあり切りたくもなし”というお題に重ねた句ということですので「盗人を捕らえてみれば我が子なり 切りたくもあり切りたくもなし」となりますね。
お題を知ると、いっそう複雑な、やりきれない親ごころが伝わってきます。このような数多くの前句付け作品の選別をしていたのが柄井川柳という人物。そう、文芸名としての「川柳」の由来です。そのご本人はあまり多くの句を遺していませんが、センスのいい句を選ぶことに優れていたために抜群の人気を集めていたそうです。いわゆる公募コンテストのようなものですから入賞者には賞品もあったとか。現代も同じような楽しみ方をしているあたりにもなんだか親近感が湧いてきませんか?≪執筆者紹介≫
やすみりえ (川柳作家)
1972年、神戸市出身。
大学卒業後、本格的に川柳の道へ。
恋愛をテーマとした独自の川柳作品を発表するかたわら、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌の川柳コーナーの選者を務める。 また、各種コンテストの審査員も多数。
文化庁国語課「言葉について考えるワークショップ」では小・中学生に句を詠む楽しさを伝える活動も行っている。
『サラリーマン川柳 よりぬき傑作選』(選、監修)『50歳からはじめる、俳句・川柳・短歌の教科書』(監修)、最新句集『召しませ、川柳』等出版も多数。
文化庁文化審議会委員、(一社)全日本川柳協会会員
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