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やすみりえの「ことのは5・7・5」Vol.9
2017.04.05
春の陽がきらきらと輝く中、新しい生活をスタートさせた方も多くいらっしゃることでしょう。私はちょうど数日前に高校時代の恩師とメールでやりとりしたことも相まって、懐かしい入学式のことや教室の風景が鮮やかに蘇ってきます。
高校三年間、クラブ活動には所属していなかったのですが書道サークルのようなものに参加していて、さまざまな作品づくりをしたことを思い出します。ここでは、文字を美しく書く練習をするだけではなく、例えば、半紙にもひと工夫。絵の具を水に薄めて自分で好きな色に染めた半紙を使ったり、仮名文字で好きな和歌を何首も綴って巻物のようなものを制作したり。文化祭の展示用に千代紙を表紙にした作品集も作った覚えがあります。おかげで、書を通してあれこれせっせと作業する楽しさも味わえました。振り返ると、指導してくれた先生のアイデア力にも感謝ですね。
さて、川柳は出来上がった一句を短冊に書いたりしますが、こんな江戸時代の川柳を見つけました。
〈短冊の豆腐も売れる花の山〉
“花の山”は、お花見の場所のことですね。江戸の桜の名所を詠んでいると思われます。では“短冊の豆腐”とは?短冊にお豆腐の絵でも描いてあるのでしょうか。いいえ、これはいわゆる田楽のことなんです。当時、短冊形に切った豆腐を串に刺したものが屋台で売られていたんですね。桜見物にやってきた人々の小腹を満たすちょうどいい食べ物だったのでしょう。短冊形、と言い表すことで一層その場面が想像できる効果を感じられます。
春の賑いがうまく表現されたこの川柳に、いつの時代も変わらない桜を愛でる心もしっかり描かれています。
≪執筆者紹介≫
やすみりえ (川柳作家)
1972年、神戸市出身。大学卒業後、本格的に川柳の道へ。恋愛をテーマとした独自の川柳作品を発表するかたわら、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌の川柳コーナーの選者を務める。 また、各種コンテストの審査員も多数。文化庁国語課「言葉について考えるワークショップ」では小・中学生に句を詠む楽しさを伝える活動も行っている。『サラリーマン川柳 よりぬき傑作選』(選、監修)『50歳からはじめる、俳句・川柳・短歌の教科書』(監修)、最新句集『召しませ、川柳』等出版も多数。
文化庁文化審議会委員、(一社)全日本川柳協会会員
やすみりえさんの公式ブログはコチラ
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