教育・学習

「漢検」解答データからわかる漢字学習のポイント【中編】漢字の間違い方を分類してみよう

「漢検」解答データからわかる漢字学習のポイント【中編】漢字の間違い方を分類してみよう

 こんにちは、漢検協会 調査チームの調査員Akiです。「漢検」の解答データについて調査・分析しています。

 年間約140万人分の答案を採点する漢検協会は、受検者のみなさんが書いた、たくさんの「手書き文字」のデータを保有しています。それら大量の「手書き文字」を手がかりに、みなさんの生活、学習に役立つ漢字の情報を発信していきたいと思います。

 前編では、「漢字の書き間違い方」には、「ちょっとした字の形の間違い」だけではなく、「まったく別の漢字を書いてしまっている間違い」という場合も多くある、というお話をしました。特に学年が上がって学習する漢字が増えていくと、間違い方も複雑さを増していきます。

 中編では、漢検協会が保有する解答データを実際に示しながら、「漢字の書き間違い方」のパターンについて、もう少し深掘りをしていきましょう。

 まず、こちらの問題をご覧ください。

2023年度3級検定問題より)



 この書き取り問題の正解はなんでしょうか?

 そう、「焦点」ですね。



 では、逆のことを考えてみましょう。

 この書き取り問題が出題されたとき、「×になった答案」にはどのようなものがあったのでしょうか?

 私たち調査チームは、この問題が出題されたときの解答データを分析しました*1。

 特に1字目「焦」の間違いにしぼってみると、多く見られた誤答には次のようなものがありました。字の後ろに記載したパーセンテージは、誤答の中に占める割合です。

 40% (「照」を漢字ペディアで調べる)

 9% (「象」を漢字ペディアで調べる)

 8% (「集」を漢字ペディアで調べる)

視 5% (「視」を漢字ペディアで調べる)

 4% (「昇」を漢字ペディアで調べる)

 これらはすべて「焦点」という正解に対して書かれた「×になった答案」、つまり「誤答」です。ただ、すべて誤答ではあるものの、それぞれの漢字が書かれた理由は違うように思えます。

・「焦」と同じ形を持つ漢字だから。

・「焦」と同じ読みである「ショウ」を持っている漢字だから。

・「焦」と意味が似ているように感じられる漢字だから。

 正解である「焦」という漢字に対して、それぞれの誤答がどのような漢字であるかを簡単に表に表すと、次のようになります。

「焦点」の書き取り問題における誤答の比較表

 このように考えてみると、書かれた誤答によって、解答者が何を手がかりに解答しようとしたかを、想像することができます。

 「昇点」と答えた人は、「読み」を手がかりに解答したのではないでしょうか。

 対して、「照点」と答えた人は、「読み」だけでなく、「形」や「意味」の点からも、解答を考えようとしていたかもしれません。

 ひとつの観点から考えた人と、複数の観点から考えた人がいる。

 では、「昇点」と答えた人と、「照点」と答えた人……この両者のあいだで、「漢検」の総得点に違いはあるのでしょうか?

 次回の後編では、「漢字の書き間違い方」の違いと、「漢検」での総得点の関係性について探りながら、間違い方からわかる漢字学習のポイントについてご紹介します。


≪注釈≫

*1…調査した検定=2023年度第1回公開会場(2023年6月18日実施)の3級

調査した問題=大問10-5「人物にショウテンを合わせて撮る。」

調査対象=15歳の受検者3,478人からランダムで抽出した1,000人

誤答数=255(完全な白紙は「無答」扱いとして除外)

≪参考リンク≫

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≪おすすめ記事≫

新聞漢字あれこれ148 「詐」と「搾」 同音ではないけれど  はこちら

「殻物?穀物?」正しく覚えて得点アップ!その1~漢検・採点現場より③~ はこちら

≪執筆者紹介≫

調査員Aki

「漢検」の解答データを調査・分析する調査チームのメンバー。趣味はカメラ、ドラム、御城印集め、サッカー観戦。よく「多趣味だね」と言われる。

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