京都「祇園」のちょっとややこしい話について

今年5月に日本漢字能力検定協会は、本部を移転しました。移転先は同じ京都市内の祇園(ぎおん)地区。八坂神社や花見小路など、京都の中でも有数の観光地です。
さて、新事務所に移転して1ヶ月。街を歩いていて気がついたことがあります。
「街中にあふれる看板の字を見ると、祇園の「祇」の偏が「示」のものもあれば「ネ」のものもあるなあ。」
気になって、手元のスマホで「祇園」と打つと「ネ」+「氏」が出てきました。
会社の住所表記は「示」+「氏」だったはず…と思い、事務所に戻ってパソコンで「ぎおん」と打って変換すると「示」+「氏」が出てきます。
これはいったい?
現在、多くの漢字辞典では「祇」は、「示」+「氏」の「」が主で載っており、「ネ」+「氏」の「
」は異体字として扱われています。
それなのに、どうして使っている機器によって、「」と出たり「
」と出たりするのでしょうか。
この背景には、フォントの基本となるJIS(日本工業規格)の漢字コードの歴史がありました。
私たちが普段パソコンやスマホで目にするフォントの多くは、JIS(日本工業規格)で定められたコードにそって作られています。1978年に初めて公開されてから徐々に更新されてきたJIS漢字ですが、2004年に168字の字形変更が行なわれ、「祇」の字も偏が「ネ」から「示」に変更されたのです。
WindowsではVista以降のOSに入っている「MS明朝」や「MSゴシック」はJIS2004の規格に合わせているため、「祇園」と変換すれば「」の方で出ます。しかし、同じ文書をJIS2004に対応していないOSで見ると「
」の方で出るわけです。
実際、パソコンで作った社内文書をプリンタで出力したところ、プリンタがJIS2004に対応していなかったためか、パソコン画面では「」となっていたのに、出力紙では「
」になっていたという出来事がありました。
また、「漢字ペディア」では、「祇」の字をテキストで表示しているため、閲覧者の使う機種によって「」となったり「
」となったりします。
何ともややこしい話です。
もし、京都の祇園にお越しの際は、ぜひ街にあふれる「祇園」の文字にも注目してみてください。6月29日には、「漢字ミュージアム」もオープンしますので、こちらもお立ち寄りくださいね。
これで一件落着。と思ったら、今度は「祇園」が「祗園」になっている看板を発見!新たな問題が浮上しました。
次回に続く…!?
≪参考リンク≫
漢字ペディアで「祇」を調べよう。
6/29オープン 漢字ミュージアムのWebページはコチラ