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やすみりえの「ことのは5・7・5」Vol.8
2017.01.23
寒い毎日の続くこの時季、やっぱり恋しくなるメニューはお鍋。ということで今回は「鍋料理」の川柳をご紹介していきます。
例えば、“食”を詠んだ内容も多く見受ける江戸時代の川柳。それらを紐解いてみますと、やはり鍋料理を題材にした句がいくつもあるんですよ。
〈薬喰い人目も草も枯れてから〉 (柳多留拾遺四篇)
この“薬喰い”という言葉は冬の季語にもなっています。寒中の保温や滋養のために獣肉を食べることを指すのですが、当時の風習では世間を気にしてちょっぴり人目を憚りながら肉や鳥の鍋を食したということでしょう。“人目が枯れる”という表現でそれを伝えていますね。
そして“草が枯れる”という部分で冬場であることを伝え、この季節がいっそう鍋の美味しさを感じるということを含んでいます。当時の食文化さえも読み取れる一句と言えましょう。
続いては、こちら。
〈片棒をかつぐゆふべの鰒仲間〉 (柳多留初篇)
毒に当たることを恐れつつも、その美味しさに負けて食べた鰒鍋。その翌日、一緒に鍋を囲んだ仲間とひやひやしている様子が描かれています。またもうひとつ角度を変えて見ると、妻に内緒で美味しい鰒鍋を食べたので、仲間同士がばれない様に口裏合わせ。まさしく片棒を担ぎ合っている状況を詠んだようにも読み取れます。前出の「薬喰い」の句と一緒に眺めると、美味しい鍋料理をひっそりこっそり楽しむ雰囲気が面白いですね。いずれにしても、冬の味覚を楽しみにする気持は今も昔も変わりないといったところでしょうか。
みなさん、今夜はお鍋でも囲みながら一句詠んでみてはいかがでしょう?
≪執筆者紹介≫
やすみりえ (川柳作家)
1972年、神戸市出身。大学卒業後、本格的に川柳の道へ。恋愛をテーマとした独自の川柳作品を発表するかたわら、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌の川柳コーナーの選者を務める。 また、各種コンテストの審査員も多数。文化庁国語課「言葉について考えるワークショップ」では小・中学生に句を詠む楽しさを伝える活動も行っている。『サラリーマン川柳 よりぬき傑作選』(選、監修)『50歳からはじめる、俳句・川柳・短歌の教科書』(監修)、最新句集『召しませ、川柳』等出版も多数。
文化庁文化審議会委員、(一社)全日本川柳協会会員
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