漢字の使い分け

新聞漢字あれこれ105 インタビューにどうこたえる?

新聞漢字あれこれ105 インタビューにどうこたえる?

著者:小林肇(日本経済新聞社 用語幹事)

 テレビのニュース番組で、一般の人たちにインタビューしていることがよくあります。私だったら緊張してしまいそうですが、見ていて堂々としている人が多くて驚いています。皆さんだったら、インタビューにどんな感じでこたえますか。

 新聞記事で「インタビューにこたえる」と書く場合、漢字は内容によって「応える」「答える」に使い分けています。インタビューに応じている場合は「応える」にし、インタビューで質問に答えているのなら「答える」にするといった具合です。

 街角のインタビューなら、質問に答えるので「答える」でいいのでしょうが、そもそもインタビューに応じなければ答えることはできませんので、「応える」としてもいいでしょう。はっきり使い分けられることもあれば、「応」か「答」なのか線引きが難しい場合もあるのです。

 新聞のインタビュー記事では、質問に答えている人物の写真を掲載することがあります。写真には絵解き(写真説明)をつけて、「インタビューに答えるAさん」などとします。そこで「応」か「答」なのか悩む人がいて、どちらがいいのか質問されることも。大抵はどちらにもとれる場合が多いのですが、質問する側はどちらがいいのかはっきりした答えを欲しがります。「どちらでも正しい」とも言いにくく、写真の多くは口を開けて話している様子なので「答」と答えるようにしています。

 かつて「応」は常用漢字表で「オウ」の音読みしか示されていなかったのですが、2010年の改定で「こたえる」の訓が加わりました。それ以前は、「応じる」の意味では「インタビューにこたえる」と仮名書きするのが新聞のルールでした。とはいえ、平仮名にすれば「応」「答」のどちらの意味にもとれるということで、何でもかんでも「こたえる」にする人もいたようです。

 同じく使い分けに悩みそうなのが「絶つ」と「断つ」。例えば、政治家とある団体が「関係をたつ」とする場合は、どちらも成り立ちます。関係を切るならば「断つ」であり、関係を終わりにするなら「絶つ」にもなり、意味が近いこともあって、使い分けるのは難しいところ。ただ、こうした場合は「断ち切る」意味で「断つ」とする事例のほうが比較的多く見られます。

≪参考資料≫

『漢字の使い分けときあかし辞典』研究社、2016年
『新聞用語集 2022年版』日本新聞協会、2022年
『マスコミ用語担当者がつくった 使える! 用字用語辞典』三省堂、2020年
『記者ハンドブック 第14版 新聞用字用語集』共同通信社、2022年

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≪著者紹介≫

小林肇(こばやし・はじめ)
日本経済新聞社 用語幹事
1966年東京都生まれ。1990年、校閲記者として日本経済新聞社に入社。2019年から現職。日本新聞協会新聞用語懇談会委員。漢検漢字教育サポーター。漢字教育士。 専修大学協力講座講師。
著書に『マスコミ用語担当者がつくった 使える! 用字用語辞典』(共著、三省堂)、『謎だらけの日本語』『日本語ふしぎ探検』(共著、日経プレミアシリーズ)、『文章と文体』(共著、朝倉書店)、『日本語大事典』(項目執筆、朝倉書店)、『大辞林第四版』(編集協力、三省堂)などがある。2019年9月から三省堂辞書ウェブサイトで『ニュースを読む 新四字熟語辞典』を連載。

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ABC / PIXTA(ピクスタ)

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