名字研究家からの挑戦状!(1)各都道府県を代表する難読名字
著者:髙信幸男(名字研究家)
日本には約13万の名字があります。世界の中でも特に多く、同じように漢字国である中国では約5,000種、韓国は500種と言われていますので、日本の名字の数の多さが突出しています。しかも、その読み方は複雑・難読です。名字は世界各国に存在しますが、読めない名字があるのは日本だけと思われます。漢字国である中国や韓国の名字では、「金」は「きん・きむ」、「朴」は「ぼく・ぱく」と、辞書通りの読み方であり、アメリカ合衆国では「Smith」は「スミス」、「Brown」は「ブラウン」とスペルどおりの読み方です。
ところが、日本の名字はどうでしょう。
「小鳥遊」は「たかなし」と、「四月一日」は「わたぬき」と読みます。外国の方から見れば、「なぜそんな読み方になるの?」と疑問を抱くのは当然です。辞書の読み方からすれば、「ことりあそび」や「しがつついたち」となるのが当然だからです。
日本の名字は歴史が古く、日本文化とともに歩んできました。その時々の世相や思いが名字の中に埋め込まれています。世界に類のない日本独自の名字が生まれ、今日まで引き継がれています。これらの名字を、次世代にも繋いでいってもらいたいものです。
漢字検定に夢を抱いている人の中には、全ての漢字が読めると自負している方もおられるのではないでしょうか。日本各地には多くの難読名字が存在していますが、あなたは読めますか?北海道から沖縄県までの各都道府県を代表する難読名字を紹介しますので、是非チャレンジしてみて下さい。30問以上読めた方は素晴らしいと思います。
<問題>
【北海道・東北地方】
北海道 「四十物谷」
青森県 「治部袋」
岩手県 「西風館」
宮城県 「四十九院」
秋田県 「寿松木」
山形県 「神来社」
福島県 「過足」
【関東地方】
茨城県 「堆」
栃木県 「倭文」
群馬県 「都木」
埼玉県 「舎利弗」
千葉県 「月見里」
東京都 「九」
神奈川県「一寸木」
【中部地方】
山梨県 「粟冠」
長野県 「位高」
新潟県 「飯酒盃」
静岡県 「一尺八寸」
愛知県 「樹神」
岐阜県 「定標」
富山県 「眼目」
石川県 「日月」
福井県 「爬揚」
【近畿地方】
三重県 「垂髪」
滋賀県 「心山」
京都府 「鶏冠井」
大阪府 「右衛門佐」
奈良県 「霊」
和歌山県「左巴」
兵庫県 「十七夜月」
【中国地方】
岡山県 「五老海」
広島県 「塒」
山口県 「勘解由小路」
島根県 「五十殿」
鳥取県 「鷦鷯」
【四国地方】
香川県 「神余」
徳島県 「発」
高知県 「甲把」
愛媛県 「妻鳥」
【九州地方】
福岡県 「京都」
佐賀県 「一番合戦」
長崎県 「七種」
大分県 「奴留湯」
宮崎県 「五六」
熊本県 「菓」
鹿児島県「水流」
沖縄県 「仲村渠」
いくつ読めましたか?30問以上読めましたか?答えは次のとおりです。
<解答>
【北海道・東北地方】
北海道 「四十物谷(あいものや)」
青森県 「治部袋(じんば)」
岩手県 「西風館(ならいだて)」
宮城県 「四十九院(つるしいん)」
秋田県 「寿松木(すずき)」
山形県 「神来社(からいと)」
福島県 「過足(よぎあし)」
【関東地方】
茨城県 「堆(あくつ)」
栃木県 「倭文(しとり)」
群馬県 「都木(たかぎ)」
埼玉県 「舎利弗(とどろき)」
千葉県 「月見里(やまなし)」
東京都 「九(いちじく)」
神奈川県「一寸木(ちょっき)」
【中部地方】
山梨県 「粟冠(さっか)」
長野県 「位高(やごと)」
新潟県 「飯酒盃(いさはい)」
静岡県 「一尺八寸(かまつか)」
愛知県 「樹神(こだま)」
岐阜県 「定標(じょうぼんでん)」
富山県 「眼目(さっか)」
石川県 「日月(たちもり)」
福井県 「爬揚(はやかり)」
【近畿地方】
三重県 「垂髪(うない)」
滋賀県 「心山(むねやま)」
京都府 「鶏冠井(かえで)」
大阪府 「右衛門佐(よもさ)」
奈良県 「霊(みたま)」
和歌山県「左巴(さわ)」
兵庫県 「十七夜月(かのう)」
【中国地方】
岡山県 「五老海(いさみ)」
広島県 「塒(ねぐら)」
山口県 「勘解由小路(かでのこうじ)」
島根県 「五十殿(おむか)」
鳥取県 「鷦鷯(ささき)」
【四国地方】
香川県 「神余(かなまる)」
徳島県 「発(ばら)」
高知県 「甲把(がっぱ)」
愛媛県 「妻鳥(めんどり)」
【九州地方】
福岡県 「京都(みやこ)」
佐賀県 「一番合戦(いちまかせ)」
長崎県 「七種(さいぐさ)」
大分県 「奴留湯(ぬるゆ)」
宮崎県 「五六(ふのぼり)」
熊本県 「菓(このみ)」
鹿児島県「水流(つる)」
沖縄県 「仲村渠(なかんだかり)」
<解説>
このように、簡単な文字の名字でも読み方が難しいのです。それぞれの名字の読み方には理由があります。
●「月見里」
「月」がよく「見」える所「里」には、月を隠す「山が無い」ので「やまなし」となります。
●「九」
「九」が一文字なので「いちじく(一字九)」となります。
●「一尺八寸」
鎌が武器になるのを恐れた殿様が、鎌の柄(つか)の長さを「一尺八寸」までとしたため、「一尺八寸」で「かまつか」と読みます。
●「鶏冠井」
鶏の頭の鶏冠が赤い楓の葉に似ていることから「かえで」と読みます。
●「十七夜月」
十五夜の夜に月に願いをかけたことが、二日後の十七日の夜に願いが叶うと言われていることから「十七夜月」で「かのう」と読ませます。
本来の漢字の読みとは全く違う読み方をするのが日本の名字の難しさと素晴らしさです。漢字検定を目指している皆様も、是非難読名字の読み方にも挑戦してみてはいかがでしょうか。
次回、「名字研究家からの挑戦状!(2)東日本編」は10月22日(火)公開予定です。
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≪著者紹介≫
髙信幸男(たかのぶ・ゆきお)
司法書士・苗字研究家。1956年茨城県大子町生まれ。茨城県水戸市在住。日本家系図学会会員、茨城民族学会会員、日本作家クラブ会員。高校生の時から趣味で名字研究を始め、2024年で51年を迎える。その間、全国を旅しながら名字を収集し、それらの名字の由来やエピソードを本に書いたり、講演会等で発表したりしている。
主な出演番組:NHK「熱中時間」「ファミリーヒストリー」、日本テレビ「ニノさん」「スクール革命」「月曜から夜ふかし」「沸騰ワード10」、TBSテレビ「櫻井有吉THE夜会」「水曜日のダウンタウン」、テレビ朝日「クイズ雑学王」「ナニコレ珍百景」「羽鳥慎一のモーニングショー」、フジテレビ「99人の壁」「とくダネ」「さまぁーずの神ギ問」
著書:『難読稀姓辞典』『名字歳時記』(日本加除出版)、『漫画・珍名さん』(芳文社)、『トク盛り名字丼』(柏書房)、『激レア名字クイズ100』(JTBパブリッシング)、『ご当地珍名 見つけ隊』(恒春閣)