四字熟語

四字熟語根掘り葉掘り50:画数の多い四字熟語を求めて……

四字熟語根掘り葉掘り50:画数の多い四字熟語を求めて……

著者:円満字二郎(フリーライター兼編集者)

 4文字の合計画数が最も多い四字熟語は何でしょうか?

 私が長い間、この問題に対する答えだと思っていたのは、「蓴羹鱸膾(じゅんこうろかい)」でした。文字通りには、〈ジュンサイの煮物と、松江鱸(しょうこうろ)という魚の刺身〉のこと。昔の中国で、都のお役所に勤めていたある人物が、ふるさとの秋の味覚だったこれらを無性に食べたくなって、勤めを辞めて故郷に帰ってしまった、という話から、〈故郷に帰りたいという気持ち〉を指して使われます。

 この四文字の画数を数えると、(草冠は3画だとして)合計77画。けっこうな数ですよね! でも、その後、いろいろな四字熟語辞典を調査してみたところ、もっと画数が多いものが見つかりました。

 それは、「鬱鬱葱葱(うつうつそうそう)」。『漢検四字熟語辞典』をはじめとして、『三省堂四字熟語辞典』や、学研の『用例でわかる四字熟語辞典』などに載っています。意味は、〈樹木がこんもり茂っているようす〉や〈意気盛んなようす〉。4文字の合計画数は、なんと82画。「鬱」1文字で29画もありますから、それが2つ入っているというのは、さすがに強いですねえ……。

 最多画数の四字熟語はこれで決まり! と思っていましたら、先日、諸橋轍次『大漢和辞典』(大修館書店)を眺めていて、その上を行く四字熟語を見つけてしまったのです。

 その四字熟語とは、「騏驥驊驑(ききかりゅう)」。「騏驥」とは、〈一日に千里も走るという駿馬〉のこと。「驊驑」は、はるか昔のある王様が世界を周遊した時に乗っていたという、伝説上の駿馬の名前。合わせて〈駿馬。すぐれた馬〉を表す、と『大漢和辞典』には書いてあります。

 「騏驥驊驑」の4文字の画数を数えると、順に、18、26、20、22で、合計86画。「鬱鬱葱葱」は、草冠を4画で数えることにしても、84画にしかならず、残念ながら及びません(もっとも、その場合には、「驊」も1画、あるいは2画増えることになります)。新チャンピオンの誕生ですね!

 とはいえ、みなさんの中には、こんな疑問を抱かれる方もいらっしゃることでしょう。「騏驥驊驑」なんて四字熟語、ほんとに使われることがあるの? そんな四字熟語になんの意味があるのかなあ……。

 至極まっとうなご意見ですね。ただ、それを言えば、「鬱鬱葱葱」はおろか、「蓴羹鱸膾」だって、現代の日本語ではまず使われることがないでしょう。最も画数の多い四字熟語は、72画の「魑魅魍魎(ちみもうりょう)」くらいで打ち止めにしておくのが、現実的なところかもしれませんね。

≪参考リンク≫

漢字ペディアで馬偏の漢字を調べよう。
漢字ペディアで「魑魅魍魎」を調べよう。

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≪著者紹介≫

円満字二郎(えんまんじ・じろう)
フリーライター兼編集者。 1967年兵庫県西宮市生まれ。大学卒業後、出版社で約17年間、国語教科書や漢和辞典などの編集担当者として働く。 著書に、『漢字の使い分けときあかし辞典』(研究社)、『漢和辞典的に申しますと。』(文春文庫)、『知るほどに深くなる漢字のツボ』(青春出版社)、『雨かんむり漢字読本』(草思社)など。 また、東京の学習院さくらアカデミー、名古屋の栄中日文化センターにて、社会人向けの漢字や四字熟語の講座を開催中。 ただ今、最新刊『四字熟語ときあかし辞典』(研究社)に加え、編著の『小学館 故事成語を知る辞典』が好評発売中!
●ホームページ:http://bon-emma.my.coocan.jp/

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MakiEni/ PIXTA(ピクスタ)

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