まぎらわしい漢字

新聞漢字あれこれ44 コロナ渦の影響はいかに?

新聞漢字あれこれ44 コロナ渦の影響はいかに?

著者:小林肇(日本経済新聞社 用語幹事)

 この春、インターネットを使ったビデオ会議システムで数十人を相手に講義をしました。これまで対面での講義しか経験していなかったため、戸惑いもありましたが、何とか終えることができました。

 新型コロナウイルスの感染防止の意味もあり、3密にならないよう会場(教室)に数人、教室外の数十人に対して90分の講義をしました。これまで対面でやってきたことと同じにできるよう準備をしましたが、それよりもシステムで何ができるのかを意識して資料を作成すれば良かったなどと、いま反省しているところです。

 初めは教室にいる受講者の反応ばかり見ていましたが、パソコン画面に目をやれば教室外の受講者も積極的に文字で「発言」してきます。これは便利だと思い、質問を投げかけると、複数の人が一斉に文字で答えてくれました。質疑応答も、画面で顔を見ながら双方でやりとりできますので、話が一方通行にならない良さがあります。IT(情報技術)に苦手意識を持つ私でも、次の機会があればもう少し別な形で講義ができないものか、などと考えています。

 さて、今年も日本経済新聞社に新人が入ってきました。4月下旬、これから新聞記者として働く若者たちに、校閲記者の立場から「ミス防止研修」を行いました。新聞のミスを防ぐ役割を校閲記者が担うのは当然ですが、ミスは元から絶つのが何よりも大事です。新人記者たちに誤りやすい事例やそれを防ぐポイントなどを、実例を交えながら紹介。短時間ではありましたが、いろいろと頭の中に入れてくれたことと思います。ここで、実際に研修で使った教材から問題を出してみましょう。皆さんも挑戦してみてください。


 【問】abのうちから正しいものを選び、その読み方を書いてください。

 1.契約金1億円プラス出来高払い5000万円、《a.年棒 b.年俸》1500万円の最高条件で仮契約した。

 2.《a.給油 b.給湯》や煮炊きにプロパンガスを使う。



 パソコン入力でよくあるのが変換ミス。読み方が正しくても同音異義語を選択して誤ることですが、ここで取り上げたのは「誤読から生まれる入力ミス」。読み方を間違えているために起こるミスで、意外に多くあります。1の正解はb「ねんぽう」。これを俸と棒の字形が似ているからか「ねんぼう」と思い込んでいる人がいて、プロ野球の契約更改の記事などで誤るケースが見られます。2の正解はb「きゅうとう」。これも「きゅうゆ」と間違って覚えている人がいます。給油にプロパンガスを使ったら大事故になってしまいそうで危ないですね。

 1の問題に関連して、字形が似ていて間違う最近の例といえば「コロナ禍」。これを「コロナ渦」「コロナ鍋」と間違うことがあるようです。パソコンで入力する際に「ころなか」と打っても一括変換しないからなのでしょう。「コロナ」の後に「禍」を入れる際に同音の「渦」を誤入力しているのか、または「コロナうず」と思い込んでいるのか。さすがに「コロナ鍋」は論外ですが、「コロナ渦」はよく見かける誤りで、注意したいものです。ほかに「3密」を「3蜜」としてしまうと「校閲が甘い!」などと言われかねません。ちなみに、今回のコラムの見出しは「渦」を入れておきました。間違いに気づきましたか?

≪参考リンク≫

漢字ペディアで「禍」を調べよう
漢字ペディアで「渦」を調べよう
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≪著者紹介≫

小林肇(こばやし・はじめ)
日本経済新聞社 用語幹事 1966年東京都生まれ。
金融機関に勤務後、1990年に校閲記者として日本経済新聞社に入社。編集局 記事審査部次長、人材教育事業局 研修・解説委員などを経て2019年から現職。日本新聞協会新聞用語懇談会委員。漢検漢字教育サポーター。漢字教育士。 著書などに『謎だらけの日本語』『日本語ふしぎ探検』(共著、日経プレミアシリーズ)、『文章と文体』(共著、朝倉書店)、『日本語大事典』(項目執筆、朝倉書店)、『大辞林 第四版』(編集協力、三省堂)、『加山雄三全仕事』(共著、ぴあ)、『函館オーシャンを追って』(長門出版社)がある。2019年9月から三省堂辞書ウェブサイトで『ニュースを読む 新四字熟語辞典』を連載。

≪記事画像≫

花火 / PIXTA(ピクスタ)

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