「好きな四字熟語アンケート」結果発表④!座談会後編

こんにちは、漢字カフェ担当のキンスケです。
3月30日に公開した記事:「好きな四字熟語アンケート」結果発表①!上位にランクインしたのは…!?で、アンケート結果を発表しました。
アンケート結果について、漢字カフェで「四字熟語根掘り葉掘り」の連載をしている円満字二郎様と、「新聞漢字あれこれ」の連載をしている小林肇様にオンライン上で座談会をしていただきました!大変な盛り上がりとなったため、前中後編に分けて、座談会の様子をお届けします。
●前編はこちら●
●中編はこちら●
●四字熟語が四文字である理由とは
キンスケ(以下「キ」):おふたりの思う、四字熟語の魅力や、私たちにもたらす影響を教えてください。
円満字様(以下「円」):広い意味で、知識の宝庫であることが魅力です。それとは別に、堅苦しくない四字熟語というものが、四字熟語の世界にはあります。ユーモアがあったり、パロディとして使われたりするものです。上手に使うと、コミュニケーションの潤滑油になりえます。四字熟語や漢字には伝統文化の化身といった面と、サブカルチャーのような面と、二面性があるような気がします。普段は堅苦しい面が強調されていますが、ふわふわとした柔らかいものとの相性も良い。堅苦しいイメージがあるからこそ、柔らかいものに使われたとき、いきいきとするのかもしれません。
小林様(以下「小」):漢字でいうと、画数の多い字は目に留まりやすいので、訴求効果があり、広告などで活用されることが多いです。同様に、読み方も意味もよく分からないけれど、それらしい漢字を四文字並べると、読み手が勝手にイメージを膨らませることがあります。漢字四文字の並びには魔力のようなものがあるようです。
円:三文字や五文字では、なぜダメなんでしょうね?
小:漢字四文字を見ると、落ち着くのでしょうか。
円:中国語では、漢字一文字が一拍の音です。一拍の音より、二拍の「ぽんぽん」というリズムの方が安定しますよね。現に、中国語では二字熟語が単語の基本で、まとまった意味を表すことのできる四字熟語も基本的な単位として機能しています。つまりリズムがよいのです。しかし、日本語になると、漢字の読み方はさまざまなため、リズムは関係ないですよね。「情状酌量」と「是々非々」の発音のリズムはまったく違います。そう思うと、日本では、見た目に心地よさを感じているのでしょう。日本人が四字熟語を好む理由をもう何年も考えていますが、まだ結論は出ていません。
キ:漢詩では、五言絶句や七言律詩などを習った覚えがありますが…
円:もともとは四字一句だったんです。それに一字プラスして、五言のモダンなリズムが生まれてくるんです。モダンといっても1000年以上前のことになりますが。
●番外編「焼肉定食」
キ:「焼肉定食」はジョークとしてよく聞きますが、まさかこんなに上位に入るとは思いませんでした。
小:若い方はご存じないかもしれませんが、テレビのクイズ番組の名解答者でもあった漫画家のはらたいらさん(1943~2006)が、学校の試験で「弱肉強食」とすべきところを「焼肉定食」と書いてバツをもらった、という有名なエピソードがあります。
円:「□肉□食」を「焼肉定食」と試験で間違えるというのは、昭和の冗談の定番でしたよね。
小:新聞的には「焼き肉定食」と送り仮名をつけないといけないんです。でも、メニューには「焼肉定食」と送り仮名なしで書かれているのでしょうね。そういえば、最近は「焼肉定食」というメニューをあまり見かけないですね。
円:昔は定食の種類が少なく、その中でも焼肉定食は高級なものだったので、余計におもしろかった。今はもっと具体的に言わないといけないのでしょう。豚の生姜焼き定食、とか。
小:そう思うと、昭和の時代は、何の肉を使っても良かったのかもしれませんね。今は許されないでしょうけれど。
円:我々は何の肉か分からないものを食べていたんですよ、当時(笑)。
キ:そんなわけはないと思いますが(笑)。
円満字様、小林様、興味深いお話をありがとうございました!日本人にとっての四字熟語の意義や、四字熟語の可能性について、改めて考えることができました。引き続き、おふたりの連載記事をお楽しみに!
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≪プロフィール紹介≫
円満字二郎(えんまんじ・じろう)
フリーライター兼編集者。 1967年兵庫県西宮市生まれ。大学卒業後、出版社で約17年間、国語教科書や漢和辞典などの編集担当者として働く。 著書に、『漢字の使い分けときあかし辞典』(研究社)、『漢和辞典的に申しますと。』(文春文庫)、『知るほどに深くなる漢字のツボ』(青春出版社)、『雨かんむり漢字読本』(草思社)、『漢字の植物苑 花の名前をたずねてみれば』(岩波書店)など。最新刊『難読漢字の奥義書』(草思社)が発売中。
●ホームページ:http://bon-emma.my.coocan.jp/
小林肇(こばやし・はじめ)
日本経済新聞社 用語幹事
1966年東京都生まれ。金融機関に勤務後、1990年に校閲記者として日本経済新聞社に入社。編集局 記事審査部次長、人材教育事業局 研修・解説委員などを経て2019年から現職。日本新聞協会新聞用語懇談会委員。漢検漢字教育サポーター。漢字教育士。 専修大学協力講座講師。
著書に『マスコミ用語担当者がつくった 使える! 用字用語辞典』(共著、三省堂)、『謎だらけの日本語』『日本語ふしぎ探検』(共著、日経プレミアシリーズ)、『文章と文体』(共著、朝倉書店)、『日本語大事典』(項目執筆、朝倉書店)、『大辞林第四版』(編集協力、三省堂)、『加山雄三全仕事』(共著、ぴあ)、『函館オーシャンを追って』(長門出版社)がある。2019年9月から三省堂辞書ウェブサイトで『ニュースを読む 新四字熟語辞典』を連載。
キンスケ
漢字カフェ担当の漢検協会職員。
京都在住で、趣味は読書、博物館・水族館巡り。
好きな食べ物はスイカとおでん。