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宅配の配達員には「ありがとう」?「御苦労様」? ~平成27年度「国語に関する世論調査」より

宅配の配達員には「ありがとう」?「御苦労様」? ~平成27年度「国語に関する世論調査」より

 先日、文化庁が発表した平成27年度「国語に関する世論調査」の結果について一部をご紹介しました。本日も引き続き、同調査結果をご紹介したいと思います。

 今日のテーマは、「(2)場面ごとの敬意表現」です。

敬語は大切にされるべきと考える人が増加傾向

 「これからの時代の敬語の在り方」について、「(a)新しい時代にふさわしく,敬語は簡単で分かりやすいものであるべきだ」と「(b)敬語は伝統的な美しい日本語として,豊かな表現が大切にされるべきだ」の二つの考え方のどちらに近いかを尋ねたところ、「(b)敬語は伝統的な美しい日本語として,豊かな表現が大切にされるべきだ」と回答した人が64.1%に達しました。同様の調査を行った平成9年度(46.9%)、平成16年度(53.6%)と比べても増加していることがわかります。

宅配の配達員さんに対してかける言葉は「ありがとう」、それとも「ご苦労様」?

 注文した品を届けに来てくれた配達の人に対して、配達が終わったときに言葉を掛けるとしたら、「ありがとう」と「御苦労様」のどちらを使いますか。

 平成27年度の調査によると、 「ありがとう(ございました)」が 48.2%と最も高く、次いで「御苦労様(でした)」(37.0%)となりました。同様の調査を行った平成 17 年度と比較すると、「ありがとう(ございました)」は12 ポイント増加し、「御苦労様(でした)」は 13 ポイント減少しました(図1参照)。

 ならば、「ありがとう」が一般的であるのかと言われると、一概にそうとも言えません。この言葉の選択は年代によって傾向が異なるようです。

 調査結果を年代別に見ると、「ありがとう(ございました)」は、20 代以下で他の年代より高く7割台でした。30代以降徐々に減少し、50 代以上で 4 割前後となっています。一方、 「御苦労様(でした)」は、50 代以上において他の年代 より高く4割台となりましたが、20 代以下では1割台前半となりました(図2参照)。

図1:平成27年度「国語に関する世論調査」より
配達人に対して掛ける言葉F

図2:平成27年度「国語に関する世論調査」より
年齢別の配達人に対して掛ける言葉


 「御苦労様」は労いの言葉として昔から用いられていましたが、最近のビジネスマナーでは、「御苦労様」は目上から目下の人に使う言葉とされてきたためか、「御苦労様」という表現を用いる人が少なくなっているのかもしれません。

 敬語は大切にされるべきだと思う人は増えている一方で敬語の使われ方は変化しているというのは、とても興味深いですね。

≪参考リンク≫

 文化庁 平成27年度「国語に関する世論調査」の結果はこちら

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