日本語を大切にしすぎた結果?~平成27年度国語に関する世論調査より~

先日より、9月に文化庁が発表した「平成27年度国語に関する世論調査」の結果を、漢字カフェ編集担当がつれづれなるままにご紹介しております。
今日のテーマは「(4)「ら抜き」,「さ入れ」について」。
さて、突然ですが、
「(ア)こんなにたくさんは食べられない」
「(イ)こんなにたくさんは食べれない」
皆さんならどちらの表現を用いますか?
今回の世論調査では、約60%の人が(ア)を使うと回答しました。
では、次の2つの文ではいかがでしょうか。
「(ア)今年は初日の出が見られた」
「(イ)今年は初日の出が見れた」
今回の調査では、(ア)を使うと回答した人が44.6%だったのに対し、(イ)を使うと回答した人は48.4%を占めました。
先ほどの「こんなにたくさん・・・」の文も、「今年は初日の出・・・」の文も、共通語においては(イ)は誤りとされていて、新聞でもほとんど用いられません。本来誤りであるはずの「見れた」が、正しいとされる「見られた」よりも多くの人に用いられていることがわかったのです。
また、年代別にみると、10代では76%が「見れた」を用いると回答しています。40代までは「見れた」を用いるという回答が半数を超えていますので、数十年後には「見れた」の方が一般的となるのかもしれませんね。
では、続いて、次の2つの文ではどちらの表現を用いますか?
「(ア)明日は休ませていただきます」
「(イ)明日は休まさせていただきます」
今回の調査では、「(ア)休ませて」と回答した人が79.6%、「(イ)休まさせて」と回答した人が16.8%となりました。正しいとされている表現は「(ア)休ませて」ですので、大半の人が正しい表現を用いているという結果になります。実は、このデータが興味深いのはここからです。
調査の問1「日本語を大切にしているか」という問いへの回答別に結果を見てみると、日本語を「大切にしている(計)」と答えた人のうち、「(イ)休まさせて」を選択したのは17.1%で、これは日本語を「大切にしていない(計)」と答えた人 (11.8%)より5ポイント高い結果となりました(図1参照)。
日本語を大切に思うがゆえに、より丁寧な言葉を用いようとした結果なのでしょうか。
普段丁寧な言葉を心がけている人こそ、「さ」の入れすぎには要注意ですね。
図1
平成27年度「国語に関する世論調査」結果より
≪参考リンク≫
文化庁 平成27年度「国語に関する世論調査」の結果はこちら