コミュニケーション能力とは何の力?~平成 28 年度「国語に関する世論調査」より~

文化庁は9月21日に平成28年度「国語に関する世論調査」の結果を公表しました。今回のテーマは「コミュニケーション」。結果の一部をご紹介したいと思います。
「コミュニケーション能力は重要か 」の質問に対して、「そう思う」(81.4%)または「どちらかといえばそう思う」(14.9%)と回答した人は96.4%となりました。
年代別にみると、全ての年代で90%以上の人が「そう思う」または「どちらかといえばそう思う」と回答しており、特に、20 代は 100%が「そう思う」または「どちらかといえばそう思う」と回答していました。また、「そう思う」と回答した人の割合は、年代が下がるごとに高くなる傾向が見られました(図1)。
コミュニケーション能力が重要だと感じている人が90%を超えたのに対し、「コミュニケーション能力とはどのようなものか」の質問に対する回答は割れました。
回答割合の高い順に見ると、「いろいろな力が組み合わさったもので、言葉に関する能力が含まれる」が 33.1% 、「相手や場面、状況などによって変化するもので、一概には言えない」が 32.6%、「「話す」「聞く」「書く」 「読む」 など 、言葉に関する能力」が 30.3%、「いろいろな力が組み合わさったものだが、言葉に関する能力は含まれない」は1.6%となりました(図2)。
「コミュニケーション能力には、言葉に関する能力が含まれる」と考える人が多いようですが、その定義内容は人によって微妙に異なることが推察されます。
昨今、教育現場でもビジネスの現場でも「コミュニケーション能力は大切」であると言われています。しかし、それぞれの現場で育成したい「コミュニケーション能力」とはいったい何の力を指しているのでしょうか。指導する立場同士で話し合っても内容が異なる可能性がありますし、教わる側の生徒や新入社員が想定している「コミュニケーション能力」と指導者側の想定している能力が一致していない可能性はもっとあると言えるでしょう。
定義が一致しない能力を育てるというのは非常に困難です。もし、職場や家庭で「コミュニケーション能力」の話題が出たとき、相手が想定しているコミュニケーション能力とは何か尋ねてみてはいかがでしょう。意外な答えが返ってくるかもしれません。
≪引用・参考資料≫
文化庁ホームページ 平成28年度「国語に関する世論調査」の結果について
※グラフは「平成 28 年度「国語に関する世論調査」の結果の概要」より使用。