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新聞漢字あれこれ187 アルファベットに隠れた漢字を探る

新聞漢字あれこれ187 アルファベットに隠れた漢字を探る

著者:小林肇(日本経済新聞社 用語幹事)

 

 

 年度替わりが近づいてきました。新年度を機に商号を変更する企業があります。最近はアルファベット表記へ変更する社が増えてきました。2026年4月1日に社名変更するなかから、3社の名前に潜む漢字を見ていきましょう。

多角化で企業名から消える漢字

■ NGK
 日本ガイシ(登記名・日本碍子)からNGKへ。同社は1919年に日本陶器(現・ノリタケ)の碍子(がいし)部門が独立して設立しました。電力向け絶縁体である碍子の売上高が全体の1割以下となる一方、NGKブランドで国際展開するセラミックスが主力事業になっています。新年度から国際ブランドに社名を合わせる形になりました。
 同社が命名権を持つ名古屋市総合体育館の愛称も「日本ガイシスポーツプラザ」から「NGKスポーツプラザ」に変更されます。構成する3施設の「日本ガイシホール」「日本ガイシアリーナ」「日本ガイシフォーラム」も「クロコくんホール」「クロコくんアリーナ」「クロコくんフォーラム」にそれぞれ改称。「クロコくん」は同社のキャラクターの名前です。

■ Joshin
 上新電機からJoshinに変更。1948年に上新電気商会として創立した同社は、上新電機産業を経て1958年から現商号になりました。大阪を中心とした関西を基盤に東海、関東、北信越まで「Joshin」ブランドの家電量販店を展開しています。報道によれば「『電機』の枠にとらわれない柔軟な組織体制への移行を目指す」ことからの社名変更だそうです。

■ NANKAI
 南海電気鉄道からNANKAIに変更。創業は1885年。4月から鉄道事業が分社化され、不動産事業を中核とする企業に刷新されます。鉄道事業は子会社となり、南海電気鉄道の社名は引き継がれることになりました。プロ野球の南海ホークス(現・福岡ソフトバンクホークス)の名前も懐かしいですね。


 慣れ親しまれた企業名も時代の変遷とともに変わっていきます。多角化による事業構成の変化、国際展開によるブランドの確立など理由はさまざま。社名の漢字を見れば、事業内容がすぐに分かるという時代ではなくなってきました。変更直後は、間違って旧社名で書いてくる記事が出稿されることがありますので、校閲記者としては新しい社名にも目配りが必要になってきます。
 そんな意味もあって、2025年に刊行した『新聞・放送用語担当者完全編集 使える!用字用語辞典』第2版では、社名変更予定としてNGKとJoshinを掲載しました。このほかDHC(旧・大学翻訳センター)、IHI(旧・石川島播磨重工業)、TOTO(旧・東洋陶器)といった企業も取り上げています。こうした情報も役立つことがありますので、参考にしていただけましたら幸いです。

 

 

次回、新聞漢字あれこれ第188回は4月15日(水)に公開予定です。

≪参考資料≫

『マスコミ用語担当者がつくった 使える! 用字用語辞典』三省堂、2020年
『新聞・放送用語担当者完全編集 使える!用字用語辞典』第2版、三省堂、2025年

≪参考リンク≫

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≪著者紹介≫

小林肇(こばやし・はじめ)
日本経済新聞社 用語幹事
1966年東京都生まれ。1990年、校閲記者として日本経済新聞社に入社。2019年から現職。日本新聞協会新聞用語懇談会委員。漢検漢字教育サポーター。漢字教育士。 専修大学協力講座講師。
著書に『新聞・放送用語担当者完全編集 使える!用字用語辞典 第2版』(共編著、三省堂)、『方言漢字事典』(項目執筆、研究社)、『謎だらけの日本語』『日本語ふしぎ探検』(共著、日経プレミアシリーズ)、『文章と文体』(共著、朝倉書店)、『日本語大事典』(項目執筆、朝倉書店)、『大辞林第四版』(編集協力、三省堂)などがある。2019年9月から三省堂辞書ウェブサイトで『ニュースを読む 新四字熟語辞典』を連載。



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