まぎらわしい漢字姓名・名づけ

新聞漢字あれこれ200 「柴・紫」 固有名詞は要注意

新聞漢字あれこれ200 「柴・紫」 固有名詞は要注意

著者:小林肇(日本経済新聞社 用語委員)



 日本経済新聞に掲載された作家・桜木紫乃さんの「紫乃でも柴乃でも」というコラムを読みました。名前の誤字を取り上げたもので、確かに「紫」と「柴」は似ていて取り違えられそうです。私は校閲業務中に直接このような誤字を見たことはありませんが、新聞記事データベースで検索すると、いくつか確認できました。
 
 桜木さんの記事は2026年9月9日付の夕刊1面に載ったものです。「名前の一文字違いというのは、よくあることと思うのであまり目くじらも立てない」と書いてあるものの、校閲記者としてはなかなかそうもいきません。あらためて「柴」と「紫」の違いにも注意を払いたいと思ったしだいです。
 他紙の事例で恐縮ですが、栃木県下野市の地名で「柴」と「紫」を取り違えた訂正記事が2件ありました。ひとつは「柴」が正しく、もうひとつの記事では「紫」が正しかったというもの。何でこんなことがあるのかと思い調べてみたところ、まぎらわしいことに下野市には「柴(しば)」と「紫(むらさき)」という2つの地名があったのです。字の確認も大事ですが、場所の確認も必要なこともありますね。

 姓では「柴垣(しばがき)」さんもいれば、「紫垣(しがき)」さんもいます。人名・地名など固有名詞では「紫」と「柴」の違いに注意してもしすぎることはないでしょう。

◇ ◇ ◇


 2018年9月に始まった「新聞漢字あれこれ」は、おかげさまで連載200回を迎えることができました。節目にあたり、日本漢字能力検定協会の「漢字カフェ」担当の方にデータを出してもらい、どんな記事が読まれているのか傾向を調べてみました。
 2025年9月11日から2026年9月10日までの1年間の記事アクセス数をランキングしたところ、第1位になったのは第131回の「『凜』と『凛』その違いは…」(2023年11月8日公開)でした。カテゴリー別では、上位20位に入った記事のうち15本が「まぎらわしい漢字」が占めています。常に新しい記事が読まれるというわけではなく、公開してから時間が経過した記事でも、何かの調べものをするなかで読んでいただけることがあるようです。
 そんなこともあり、200回の節目の記事は「まぎらわしい漢字」としてみました。この200回の蓄積が、今後もみなさんに活用されるのであれば、筆者としてこんなうれしいことはありません。引き続きこの連載にお付き合いいただきたく、よろしくお願いいたします。



■「新聞漢字あれこれ」アクセスランキング(2025年9月11日~2026年9月10日)

記 事 公開日 カテゴリー
1 「凜」と「凛」その違いは… 2023/11/8 まぎらわしい漢字
2 「興・輿・與」似た字で混乱? 2022/5/18 まぎらわしい漢字
3 「足」と「脚」使い分けの線引きは… 2021/10/6 漢字の使い分け
4 「傳」と「傅」見分けるポイントは点の有無 2022/9/7 まぎらわしい漢字
5 「菅」と「管」 読みと字形は要確認 2020/10/21 まぎらわしい漢字
6 なぜか間違う「崇」と「祟」 2021/9/22 まぎらわしい漢字
7 「奇麗」は「きれい」な書き方か? 2023/2/8 気になる日本語
8 気になる「出生」の読み方 2026/1/14 まぎらわしい漢字
9 「詐」と「搾」同音ではないけれど 2024/7/17 まぎらわしい漢字
10 「そっくり漢字」にだまされて… 2023/10/18 まぎらわしい漢字
11 「土」に点を打つのはどの位置か 2019/6/12 まぎらわしい漢字
12 「睦」と「陸」人名ミスに理由あり 2021/6/2 まぎらわしい漢字
13 「一段落」をどう読むか 2024/10/23 気になる日本語
14 「編」と「篇」の、どこが変? 2023/6/28 漢字の使い分け
15 「磯・礒」 同じ読みでも異なる関係 2026/3/4 まぎらわしい漢字
16 「董」と「薫」姓で使うのは… 2020/10/7 まぎらわしい漢字
17 「壇・檀・擅」誤用から正用へ〝昇格〟も 2023/8/23 まぎらわしい漢字
18 ウネメさんは2人いた! 2021/6/16 まぎらわしい漢字
19 「薪」と書いて何と読む? 2020/12/2 まぎらわしい漢字
20 オーストリアを漢字1字で表すと… 2025/2/5 気になる日本語




次回、新聞漢字あれこれ第201回は11月11日(水)に公開予定です。

≪参考資料≫

『人事興信録 上 第四十五版』興信データ、2009年
『増補改訂 JIS漢字字典』日本規格協会、2002年
『日本行政区画便覧③関東北陸』日本加除出版


≪参考リンク≫

「日経校閲X」 はこちら

漢字ペディアで「柴」を調べてみよう
漢字ペディアで「紫」を調べてみよう


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≪著者紹介≫

小林肇(こばやし・はじめ)
日本経済新聞社 用語委員

1966年東京都生まれ。1990年、校閲記者として日本経済新聞社に入社。記事審査部次長、研修・解説委員、用語幹事などを経て現職。日本新聞協会新聞用語懇談会委員。専修大学国際コミュニケーション学部協力講座講師。漢検 認定エキスパート講師。漢字教育士。

著書に『新聞・放送用語担当者完全編集 使える!用字用語辞典 第2版』(共編著、三省堂)、『方言漢字事典』(項目執筆、研究社)、『謎だらけの日本語』『日本語ふしぎ探検』(共著、日経プレミアシリーズ)、『日本語ライブラリー 文章と文体』(共著、朝倉書店)、『日本語大事典』(項目執筆、朝倉書店)、『大辞林第四版』(編集協力、三省堂)などがある。日経BizGateで『誰かに話したくなるビジネス日本語』、三省堂辞書ウェブサイトで『ニュースを読む 新四字熟語辞典』を連載。

≪記事写真≫

栃木県下野市内(漢検 認定エキスパート講師の鶴田久美子さん提供)

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